まで押しかけて、薩摩屋敷を焼き払えというものもありましたが、また一方には反対に、江戸の市中を焼き払われないようにと、心中におそれ[#「おそれ」に傍点]を抱くものもありました。
 高尾の山で、七兵衛と泊り合わせた神楽師の一行が、ちょうどここへ来合わせたのは、まだ余燼《よじん》が盛んに燃えている早朝のことで、この有様に意外な感じをしたが、さあらぬ体《てい》で、これも三田の方面へ踵《きびす》をめぐらしたから、誰もあやしむものはありません。

         二十八

 ここはどこだか知らない。机竜之助は何里つづくとも知れない大竹藪《おおたけやぶ》の中をひとりであるいている。
 この時は夜です。身に白衣《びゃくえ》を着て、手には金剛杖《こんごうづえ》をついている。この大竹藪の夜は、幸いにして見通す限り両側に燈籠《とうろう》がついている。
 この時は、眼が見えるのです――それに程よい間隔を置いて、両側に立てられた四角な燈籠の光が、朦朧《もうろう》として行手を照らしている。その光は青くして白い色がある。
 けれども、いくら歩いても同じ大竹藪で、いくつ燈籠を数えてみても、みな同じ形で、同じ光で、同
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