だから、お角とてもだまってはおれなかったろうが、この時はもう一行は去って、誰もおらず、ただ香のけむりが断々《きれぎれ》としてのぼっていることによって、お角はまたあのお墓へ誰かおまいりに来たなと思っただけでした。
あのお墓へは、駒井甚三郎もお参りに来たし、今日もまた誰かお参りに来たようだが、いったい誰の墓なんだろうと軽くお角の頭にのぼっただけで、それ以上には想像を逞《たくま》しくすることがありませんでした。
もう少し深く突きとめて、これが、嘗《かつ》ては自分の下に使ったことのある、お君という薄命な娘の、地上における存在の記念であると知ったならば、お角とても、そのままにはしていなかったろうに――
今のお角には、お君という女の死生《ししょう》も知らず、まためまぐるしいこのごろの生活では、ホンの少しばかり念頭に上って来ることさえ極めて稀れであったのです。
それで、あっさりと、それだけが頭脳にうつっただけで、やがて階《きざはし》を下って、土間から楽屋の方へと進んで行くと、楽屋の入口でやかましい人の声。
その声を聞きつけて、お角は忽《たちま》ち気取《けど》ってしまいました。
寄生虫がや
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