命は、死んだ主人を守ることだけで尽きたのか。そうだとすれば、自分は当然|殉死《じゅんし》すべき運命のもので、今の生存は惰力に過ぎないのか。それとも、まだまだ生きとし生けるものの一生には、生かされてある間に、その使命が尽くるということのないものとすれば、第一の使命終って第二の使命は何。この犬は極めて謙遜、且つ従順の態度を以て、それを聞こうとしているようにも見える。自然、この犬には、主人の墓側で食を断って死ぬという古《いにし》えの忠犬に超出した高尚のふうが見える。
 とまれ、この一行、お松は香と花を携えて先に立ち、乳母《ばあや》は登を抱き、与八は郁太郎を背負《せお》い、ムク犬はその間を縫うて、例の回向院の墓地の中に進んで行きました。

         二十七

 この一行が回向院の墓地へお墓参りに来た日、その境内《けいだい》の西洋奇術大一座がちょうど千秋楽の日でありました。
 この興行は、大入り満員の売切れつづきで、すばらしい人気を博したのみならず、その人気に該当《がいとう》する実質を、見る人に与えたようです。たしかに、今までに見ないものを見せ、見た者を堪能《たんのう》させるだけの内容を
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