い後に現われた維新の政府が、かなり無遠慮に廃仏毀釈を実行したのも、一部分の責めは坊主が負わなければなりますまい。七兵衛はその時、おだやかにこういいました。
「左様でございますね、モシ、山師共がお山を食い物にしようとかかりましても、宮方のお役人と、お山の坊さんとは、よくそれを教えさとして、思いとどまらせるようにしなければならぬはずのものだと私共も思います」
切り散らし、掘《ほ》っくりかえしている事の体《てい》を見て、一同のものが白け渡りました。
その時、高尾山の麓《ふもと》の茶屋では、半ぺん坊主が一杯飲みながら、
「占《し》め占め、こう来なくっちゃならねえ」
といって、さも嬉しそうに、山を掘り崩しているところをながめては、半ぺんを肴《さかな》に、頻《しき》りに盃を傾けておりました。
半ぺん坊主は、京都あたりから来た風来坊主で、高尾の寺に籍があるわけでもなんでもないが、この近所へ草庵ようのものを構えて、ぶらぶらと暮らしている。
半ぺんが大好きで、半ぺんを肴に、酒を飲ませさえすれば上機嫌で、何でも喋《しゃべ》り出す。そこで半ぺん坊主で通って、誰も本名を知るものがありません。
「さあ、
前へ
次へ
全288ページ中252ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング