がする――賑やかな囃子《はやし》を追うて行って見ると、その影を捉えることができない。七兵衛も、どうかするとそれにでっくわせたこともあるが、わざわざ尋ねてみようとも思わなかったが、この時ふと胸に浮んだのは、その怪しげな囃子の音こそ、これらの連中の仕業《しわざ》ではあるまいか、どうもそのような気がしてならぬ。
 無事にその夜が明けて、いざ立つという時に、七兵衛が、右の神楽師の連中に向って、私も江戸へ参りますから御一緒に、とさあらぬ体《てい》にいい出すと、神楽師の長老がジロリと七兵衛をながめ、
「何卒《どうぞ》御一緒に……して、お前さんの御商売は何ですか」
 商売は、と聞かれて、七兵衛はギクリとしましたけれど、
「ええ、近在の百姓でございますけれど、百姓が嫌いなもんですから、つい……」
と言いました。つい、どうしたのだか、それは自分ながらわかりません。
 事実、七兵衛は百姓が嫌いではないのです。どちらかといえば好きなのです。青空をいただいて、地上へ自分の労力の一切を尽し、実りを天の風雨に待って争わぬ仕事を、愉快なりとしています。それで自分もけっこう一人前の百姓をやるだけの腕は持っているのです
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