うではなく、南の方へ向いて、ほどなく武州の高尾山へつきました。七兵衛は、高尾山の飯綱権現《いいづなごんげん》を信仰して、時々おまいりをしては護摩《ごま》を焚いてくることがある。七兵衛の飯綱権現信仰の心持はわかりませんが、ここへおまいりをするのは、今に始まったことではありません。
本道から、登りにかかると、ちょうど入口のところへ人夫が大勢入って、しきりに大木を伐《き》り散らしていますから、七兵衛も思わず立ちどまって、
「おやおや、たいそう材木をお伐りなさるが、どうなさるんですか」
と人夫にたずねてみますと、人夫が、
「ここへ道を開いて、車を仕掛けようというんです」
「え、ここへ道をつけて車をしかけるんですか、道はこっちにいい道があるじゃありませんか」
「そっちの道は、そっちの道として置いて、別にこっちへつけようというんだ」
「なるほど……」
七兵衛が仰いで見ますと、これからずっと山の上まで、さしもの大木を伐《き》り倒して行こうという計画らしいから、心なき七兵衛も惜しいものだという気になって、
「惜しいじゃありませんか、この大木をドンドンお伐りになっては……」
「よけいなことをいいなさ
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