の時で、腕を振えば、いくらでも振える機会を、ついその場になると、かわいそうになったり、冷淡になったりしてしまう。
盗賊を商売にするものには、物を盗むのを二の次にして、女を自由にするのを得意にする奴がある。七兵衛は、そうなれない。物を盗《と》るのは償《つぐな》いがつくが、女を辱《はずかし》めるのは罪だ……というような気に制せられるのを、自分ながら不思議に思う。
娘はかわいそうだ、主あるものは罪だ……その時、七兵衛の頭に、むらむらと湧いて来た面影《おもかげ》は、神尾主膳のところにいたお絹という妖婦《ようふ》のことであります。
あの女ならば、いくら弄《もてあそ》んでも罪にはならない……おれはいったい、あの女とずっと以前から近づきになっていたのに、いらぬ遠慮をしていたものだ。あとから出た百蔵あたりが、かなり甘ったるい言葉づかいをするのに、それをあざ[#「あざ」に傍点]笑って高くとまっていたおれは、淡泊なのか、それとも意気地がないのか。
七兵衛としては妙な心に動かされました。
雨のやむのを待って七兵衛は旅仕度をととのえて、わが家を立ち出でました。まず江戸をめざして行くのかと思うと、そ
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