ってみたりなどしました。
無事に育って、日傭取《ひようとり》かせぎ[#「かせぎ」に傍点]でもいいから、こくめい[#「こくめい」に傍点]に働いてさえくれればよい、間違っても、おれのように足が早く生れついてくれるなと心配しました。
非常な生活には、非常な警戒心が要るから、人を恋しがるような余裕は薄らぐのに、きょうはあたりまえのところへ置かれているから、あたりまえの人情が湧くと見えます。
「こんにちは……」
さいぜん、機音《はたおと》がやんだなと思ったら、いま、裏口に訪れたのは、その若い娘の声にちがいないと思いましたから、七兵衛が、
「はいはい」
膝の上の藁《わら》を払って立とうとすると、娘は早くも前の方へまわって来て、
「よく降りますね」
傘をさして、手には小笊《こざる》を提げております。
「よく降るこってすね」
七兵衛も相槌《あいづち》を打ちますと、
「おじさん、お薯《いも》をふか[#「ふか」に傍点]したから一つ持って来ましたよ」
「それはそれは」
七兵衛はおおよろこびで、娘のさしだした小笊を受取ると、中にはおさつ[#「おさつ」に傍点]のふかし[#「ふかし」に傍点]立てが十
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