その一人だと神尾が重ねて思いました。
だからこの女は、浜松に生れて、神尾家に奉公し、先代の神尾に寵愛《ちょうあい》されたことは忘れている。今日まで一緒に暮らしていた福村のことも、もう忘れかけている。
娼婦の如くもてあそばるるために生れた女があるものだと、神尾は、今あらたまったようにこの女の毒に触れました。
そこで、だまって、障子の中へ入って行く途端に、自分の面《かお》が大きくお絹の見ていた鏡へうつるのを見出して、思わずクラクラと眩暈《めまい》がしました。
いつになっても、蠱惑的《こわくてき》な若さを持ったお絹の面と、眉間《みけん》の真中に大傷を持った自分の面とが、鏡面に相並んで浮び出でたのを見た神尾は、クラクラと眼がくらむのを覚えました。
「ああ、なんという醜《みにく》い面《つら》だ」
神尾は腹の底から、自分の生れもつかぬ傷を呪いました。お絹の面《かお》が、見るたびに色っぽくなってゆくにひきかえて、自分は生涯、人中へはこの面《つら》を出されはしない。
弁信が憎い。おれの面体《めんてい》にこの傷をつけたのは、あのこましゃくれ[#「こましゃくれ」に傍点]の、お喋りの、盲目《めく
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