す恥知らずを、さすがの神尾も呆《あき》れて、よんどころなく、
「福村も力を落したろう」
「ええ、あの人は、今のところ、わたしがドコへも行けないものとたかをくくって、ワザと焦《じ》らすつもりでいたところを、こうして、さっさと片付けて、綺麗《きれい》に引払って来たものですから、びっくり[#「びっくり」に傍点]して、しまいに泣いてあやまりましたよ。お気の毒でした」
「かわいそうに」
「かわいそうなことはございません、少し思い上っていたところですから……」
 神尾はだまって、お絹の横顔をながめると、緊張のない肌がぼちゃぼちゃ[#「ぼちゃぼちゃ」に傍点]として、その中に濃厚な乳白色のつや[#「つや」に傍点]が流れている。これは、たまらない多情者だと神尾が思いました。
 こういう女は、生涯、幾人《いくたり》の男をも相手にすることができる。男から男へとうつり行く間に、前の男をわすれてしまう。だから、こういう女をつかまえて、薄情を責めるのは間違いである。世には天性、女郎になるように出来ている女があって、それが境遇上、そのところを得ずに奥様になったり、お妾になったりする女があるものだ。この女は、まさしく
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