ました」
とお絹が答える。
久しく田舎《いなか》に引籠《ひきこも》っていた神尾の眼には、この女の姿が、めざましいほど、若くあだっぽく[#「あだっぽく」に傍点]見えるものらしい。
「ほんとにお前は若いよ、羨《うらや》ましい。拙者などは山の中にくすぶって[#「くすぶって」に傍点]、あたら年をとってしまった」
「御冗談でしょう、御前《ごぜん》などはこれからでございますよ」
「盛りは過ぎたな」
と神尾が、自分を嘲るようにいいますと、
「これからでございますよ」
お絹は自分のことをいっているような返事。
「女は幾つになっても廃《すた》りというものはないけれど……」
「廃ってしまえば見返るものもございませんから、廃らないうちが花でございます」
「お前なぞは、四十になっても五十になっても廃りっこはない」
といいながら神尾は、この女は天性、女郎になるように出来ている女だなと、つくづく思いました。
「福兄《ふくにい》さんも、いよいよわたしが出て来るとなると、泣きました」
「うむ」
神尾は苦いものを飲ませられたように思う。それまではいわなくてもよかろう。聞きとうもないことを、女の口から、平気で喋り出
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