のは、ある女の声。
「そこを、ずっと突き当って行くと開き戸がある、そこが風呂場だ」
 神尾が口で案内すると、女は心得たもので、ずっと教えられた通りに打通り、やがて帯を解く音。早くも風呂の蓋を取って、やわらかに湯を掻《か》きまわす音まで聞えましたから、お吉は躍起《やっき》の心持で、思わず台所を立って、そっと忍び足に風呂場の羽目《はめ》からのぞいて見ますと、油の乗った年増ざかりの女の肌。
 お吉がふるえた時に、廊下を渡ってくる神尾の声、
「お絹、風呂加減はどうじゃ」

         二十二

 風呂から上ったお絹が、まだ持ち運んだ荷物の散らかっている一間の中で、鏡台に向って、髪を直していると、いつか、そのうしろに立って、障子の外からのぞいている神尾主膳。
 なんともいわないで、ただお絹の後ろから、鏡にうつる姿をながめている。お絹もまた、なんともいわないで、念入りに髪をいじっている。
 鏡にうつるお絹の面《かお》に、わざとするような恥かしさ。頬から首筋、後ろへまわした手首までが、乳のように白い。
「お前は、いつになっても年をとらないね」
と神尾がいう。
「こんなに、お婆さんになってしまい
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