れに来た職人達も、別に怪しむほどのことにも至らず、そうして無事に、十日余りを経過しました。
ところが、その翌日、かいがいしく働いているお吉を、いとど怪しく思わせたのは、その日に、荷車や釣台がかなり賑わしくこの屋敷へ着いて、一応の案内を申し入れると共に、無雑作にその荷物を運び入れてしまったことです。
一時は、お吉も人ちがいかと思いましたが、主人の神尾も充分に諒解があるらしく、お吉にもいいつけて、その荷物を一間へ運ばせてしまいました。
荷物を運びながら、お吉がおだやかでないと思ったのは、それがことごとく、箪笥《たんす》、長持、鏡台、お嫁入りの調度といったような品――はて、誰が来るのだろう。お吉は脅《おびやか》されたように胸が騒ぎました。
ここへ頼まれてくるまでの話には、神尾の殿様の周囲には、全く女気というものがなく、また自分もうちあけて頼もうとするほどの女がないのだから、ぜひにといわれて、お吉は、それを光栄とも、誇りともするような気分で、わが家気取りでかいがいしく働いているところへ、こうして物々しく女の調度がおくり込まれたから、裏切りにあったように胸を騒がせたのも無理はありません。
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