も、唐《から》でも、天竺《てんじく》でも、無茶苦茶にあるいてくるのだ。トテもおいら[#「おいら」に傍点]のこの心持では、一つところにじっとしてはいられねえ」
と叫び出すと共に、抛《ほう》り出しておいた手桶を取って、その水をザブリと花桶の中に打込むと共に、疾風の如くこの店をかけ出して、伝通院の境内に姿をかくしてしまいました。

         二十一

 その時分、神尾主膳は、もう栃木の大中寺《だいちゅうじ》にはおりません。
 ほどなく、根岸の御行《おぎょう》の松に近いところへ、かなりの広い屋敷を借受けて、そこへ移り住んだ主《ぬし》というのが、別人ならぬ神尾主膳でありました。
 この屋敷は、とても以前の染井の化物屋敷ほどの面積はないが、それでも相当の間数と庭とがあって、中にじっと潜《ひそ》んでいる分には、あまり近所の人目に、わからないほどの広さと静けさとを持っています。
 ここへ移り住んだけれども、その当座、神尾は決して外出をするということがなく、日中は庭先へさえも出ない有様で、至極おとなしく[#「おとなしく」に傍点]暮らしていたが、どうかしたハズミで、部屋に備付けの鏡を見た時に、神尾
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