て、武術の一般を学んでいないということもあるまい。まして、こうして物おだやかでない市中を、ひとりあるきするほどのものには、相当の心得がなければならないはず。その当時の紀綱《きこう》を維持する斬捨て御免の制度は、武士階級の面目を保護するために、百姓町人に向って応用することをゆるされているはず。しかるに、取るにも足らぬ小者《こもの》の罵詈悪口《ばりあっこう》に対して、この意気地ない有様は何事。
 それでは、宇治山田の米友の槍の手並と、その矮躯短身《わいくたんしん》のうちにひそむ非凡の怪力《かいりき》を知って、それに怖れをなしているのか。そうでもあるまい。
 この時、宇治山田の米友が、何におどろいてか、両の手を頭の上に高くあげて、
「死んだものを活《い》かしてかえせとは無理だった、これは人間の力でできることではねえ、神仏の力でも、死んだものを活かしてかえすことはできねえ……往《ゆ》きてかえらぬ死出の旅と歌にもあらあ。そうだ、そうだ、おいら[#「おいら」に傍点]も旅に出かけるんだった。長者町の先生が、おいら[#「おいら」に傍点]をつれて京都から大阪をめぐる約束になっているのだ――京都でも大阪で
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