まあお休みあそばしませ、粗茶一つ、召上っていらせられませ」
駒井は老婆の案内に応じて、土間の長い腰掛に腰を卸すと、あとから続いた老婆は、風を厭《いと》うて障子を締めきり、やがて、渋茶の一椀を駒井の前に捧げましたから、駒井はそれに咽喉《のど》をうるおします。
朝日が、前の木立の間から洩れて、いま締めきった障子に光を投げている。内も外も静かで、本堂から洩れるおつとめ[#「おつとめ」に傍点]の音がよく聞える。
その時分、締めきった障子の外で、
「おばさん」
「はいはい」
「花を持って来たよ、これをおばさんの店で売るといいや、院代《いんだい》さんにことわってうろ抜いて来たんだよ」
内では見えないが、障子の外に立ってこういいながら、胸一ぱい[#「ぱい」に傍点]に秋草を抱え込んでいるのは、宇治山田の米友であります。
「友さん、どうも済みませんね」
婆さんは障子を少し開いて前から見ると、それは米友が歩いて来たのだか、草花が歩いて来たのだかわかりません。
「どう致しまして」
胸一ぱい[#「ぱい」に傍点]に草花を抱いた米友は、婆さんのあけたところから土間の中へ入り込み、
「花桶の中へ入れとい
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