ことに耳をふさぎたがっていた駒井。わかれて後の妻が若い小姓の誰かれを愛したとか、堂上方のあるさむらい[#「さむらい」に傍点]を始終ひきつけていたとか、京都へいった後、ずんと年上な、評判の色悪《いろあく》の公卿《くげ》さんに籠絡《ろうらく》されてしまって、今はそのお妾《めかけ》さん同様に暮らしているとか、聞きたがらない当人の耳へ、わざとするように苦々しいものがひっかかる。
それは、ドコまで信じ、ドコまで疑うの拠《よ》りどころがあるわけではないが、ただ疑われないのは、彼女の心が決して上へはのぼっていず、無限の下へ下へとおち行く光景だけは、見まいとしても眼の前へ現われてくるのです。
駒井甚三郎は、そのことを考えて、心の底から戦《おのの》くのを禁ずることができません。
「こちらが伝通院様でございます」
婆さんが言葉をかけたので、われに返って見ると、
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「伝通院殿
蓉誉智光
大禅尼
慶長七年一月二十九日」
[#ここで字下げ終わり]
伝通院殿は無事であります。その展墓《てんぼ》を最後として、駒井は老婆と共に墓地の中を出ることにしました。
再び門前の店へ戻って、
「
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