すから、駒井はその花を売る店へ寄って、
「お早う」
言葉をかけてみると、店を守るのは例の卒塔婆小町《そとばこまち》に似た一人の婆さんであります。
「いらっしゃいまし」
駒井は無雑作《むぞうさ》に店の中へ入って、
「お墓参りに来た」
「それはそれは、お早々と」
まもなく、駒井甚三郎は花と香とを携え、卒塔婆小町に似た婆さんは、箒と水とを携えて、伝通院の墓地へ通るのを見受けます。日が漸《ようや》くのぼりはじめて、寺では梵唄《ぼんばい》の響。
婆さんはかいがいしくお墓を掃除してくれる。駒井は花と香とをあげて礼拝《らいはい》する。父母と先祖と、それから、親戚のものにいちいち礼拝をして廻って、やがて、例の天樹院殿《てんじゅいんでん》の前までやって来ました。天樹院も、本多家も、多少、駒井の家と血縁を引かないということはない。駒井は、玉垣の門を開いてもらって、ここへもおまいりをして行くつもりです。香と花とを捧げ終って、駒井は何か物思うことあるが如く、やや離れて、天樹院の五輪塔を暫くながめておりましたが、
「婆さん」
箒をつかっている婆さんを呼んで、
「お前は、この天樹院様をどう思う」
「天樹
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