院様をでございますか?」
「うむ」
「どう思うと仰せられましたのは?」
「つまり、いい人か、悪い人か、愛すべき人か、憎むべき人か……」
「左様でございますねえ……」
婆さんは箒の手をとどめて、今更のように天樹院殿の大きな石塔を仰ぎ、
「お美しい方であったと存じます」
そういってお婆さんは、にっ[#「にっ」に傍点]と笑って駒井の面《かお》をながめます。今に始まったことではないが、このお婆さん自身がむかし美しい女であったに相違ない。いや美しいというよりは、美しいそのものを売り物にした経歴をたどって来た女ではないか。つまり、それ[#「それ」に傍点]者上《しゃあが》り、そういったものが、晩年のいとなみ[#「いとなみ」に傍点]を墓守で暮らしているのじゃないかと、誰にも一応は想像されることです。
「お美しくなければ、あんな騒動は起りますまいから……」
と付け足したが、この返事は駒井の期待しているところには少しも触れない。
「それではお前、坂崎出羽守と本多中務《ほんだなかつかさ》と、どちらが仕合せ者と思う?」
「それはきまっておりますよ」
「ふーむ」
今度は駒井が微笑しました。駒井の微笑は、今
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