助門下で剣術を修行した男である。剣術は出来るだろうが、畢竟《ひっきょう》ずるに剣術使いで、天下の枢機《すうき》を託すべき男ではない――また勝は一代の学者であるという評判に対して、なアにあれは正式の学問をした男ではない、いわば草双紙の通人だと。
 彼等の考えでは、勝安房ひとりに幕末史を飾らせることは、彼等自身の立場の上から、たまらなかったものらしい。さりとて全部を誣《し》うるのは、全部を讃《ほ》めるのと同じように拙策である。そこで勝の持っていた一部分の技能、つまり剣術だけをウンと讃めて、他の技能をそれで隠そうとした。あわれ、日本の歴史に二度と応仁の乱を持ち来たさないように働いた知恵者を、かれらはどうかして剣術使いだけの範囲にまつり込もうとした。
 そういった意味の時代のばかばかしさを、一学は久しぶりで逢った主人に向って訴え、且つそれが幾分か不遇の主人をなぐさめる所以《ゆえん》になるだろうと思っていたところが、案外のことに、主人はほとんどそれには取合わないほどの淡泊で、これも案外に思いました。
 しかし、この辺のことを問題としていないわが主人は、別に独特の世界を見つめている、と一学は確認す
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