足場を二段下ろして、風大《ふうだい》を揺り落し、その次は火大《かだい》、その次は水大《すいだい》、最後に地大《ちだい》を揺り動かして、かくて夜明けまでには本来の大地に、生身《しょうじん》の心耳《しんに》をこすりつけて、幽冥の消息を聞くことが必ずしも不可能とは思われません。
ただ、迷惑千万なのは、五輪塔自身で、安政の地震にさえ何の異状もなかった身が、今晩になって、突然上の方から沙汰なしに取崩されようとする運命を、おどろき呆《あき》れて手の出しようもない有様。しかし、自分をこうも無茶に取崩しにかかる身の程知らずの運命をも、やがてまた哀れむべきものだと、内心気の毒がってもいるらしい。
全く、その通りで、たとい取崩しに成功してみたところで、やがてその身に報い来《きた》る咎《とが》を思えば、空怖《そらおそ》ろしいものがある。頼山陽の息子は、寛永寺の徳川廟前の石燈籠《いしどうろう》を倒して、事面倒になったことがあります。それは酔っていたということではあり、なんにしても石燈籠のことで、謝罪で事は済んだ。けれどもこれは徳川宗族の墓地を荒して、その霊を辱《はずか》しめたということになると、非常にあぶ
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