》の何者だということは、碑面にはまさしく銘《きざ》んではあるが、暮色|糢糊《もこ》たるがために、読むことができなくなっていました。米友としてはこの墓地は、伝通院殿をはじめ、多くは徳川氏系統の貴婦人の墓を以て充たされているということだけの予備知識はあったのですから、無論、この塔も、さるやんごと[#「やんごと」に傍点]なき婦人たちの石塔の一つに相違はないと思っていたのが、いつか知らず、お君の墓ということになってしまっていました。
伝通院殿――なにがし[#「なにがし」に傍点]の高貴なる婦人――高貴ならざる婦人――同時に一般の婦人――ただ一人の婦人――お君――虐《しいた》げられたる女――それが今この重し[#「重し」に傍点]にかけられている。
そこで米友の力には、虐げられた女性のために、一つにはこの圧抑《あつよく》を除き、一つには幽冥の境を撤去開放しようという勇猛力が加わりました。
そうしてこの男は、双の腕に満身の力をこめて、満面に朱をそそぎ、五輪の塔の空輪をグラグラと動かしました。
この怪力を以てすれば、空大《くうだい》を頂上から揺り落すことはできるかも知れない。それが成功すれば、次は
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