ないが、無論、米友は、それを考えてはいない。それを考えては、またこんなこともできない。また、この際、そんな前後を考えている余地のあるべきはずもありません。
「友造さん」
「エ?」
もう一息、空大を押しきろうとする時に、米友はその手を休めて、あわただしく塔下の前後左右をながめました。まさしく自分を呼ぶ声があったからです。
「友造さん、まあ、そこで何をしているの、そんなところで……」
「あ、お婆さんか」
米友が塔の上から腰をかがめて、塔の周囲に建てめぐらした石の玉垣の入口で見つけたのは、絵にある卒塔婆小町《そとばこまち》が浮き出したような、白髪《はくはつ》のお婆さんであります。
「ああ、わたしだよ、ほんとうに、びっくり[#「びっくり」に傍点]させるじゃありませんか。なんだって今時分、そんなところへのぼって何をしているんです」
「あ、あ……」
米友が呆然《ぼうぜん》として円い眼を瞬《まばた》きをして、初めて暮色の暗澹《あんたん》たるにおどろきました。
「第一、お墓の上へのぼるなんて、勿体《もったい》ないことですよ」
「うウん」
「それは天樹院様のお墓ですよ、早くおりておいで……」
「う
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