芸妓にもそれを適用しなければならないし、遊女の源氏名にも無論、様をつけて呼ばなければならない理窟になる――それでは、知らぬ面《かお》の半兵衛とか、来たり喜之助とか、川流れの土左衛門とかいうものに対しては、どうです――という奇問に対しても、先生は少しも驚かず、いやしくも、人格を表明した存在物には、有名であろうと、無実であろうと、そこに区別を立てるようなことがあってはならぬと主張し、最後に、
「さあ、そこでもし、これから後で、愚老が、かりにも人様を呼ぶのに様づけを忘れた場合には、それを一番先に見つけ出したお方様に百ずつ進上する、軽少ながら百ずつ……」
といい出しましたから、子分たちは勇みをなして喜び、いつか先生の尻尾《しっぽ》をつかまえて、百の罰金をせしめてやろうと、腕により[#「より」に傍点]をかけました。どのみち、ひっかかるにきまっている。思えば先生もツマらない約束をしたものですが、先生としては大得意で、天晴《あっぱ》れの名案を考えたつもりで、やがてこの席を終り、薬籠持《やくろうもち》の国公を伴って、都大路をしゃならしゃなら[#「しゃならしゃなら」に傍点]と歩み出しました。

    
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