ら、医者というやつも、貴賤貧富によって、匙加減《さじかげん》があってはならねえのだ……」
といって、ソレから自慢をハジめたり、ひとをコキおろしたり、大気焔を上げましたが、結局今日の集会の要領は、今まで自分は十八文を標榜《ひょうぼう》して、貴賤上下に、この医術に基づける平等説を実行しているが、まだ人間を差別的に見る癖があって、まことにお恥かしい次第であると気がついたから、今後は徹底的にそれを実行するてはじめとして、まずすべての人を軽蔑しない意味において、今までのように、野郎や、貴様呼ばわりを全廃し、誰人に向っても「様」という字をつけて呼ぶことにするから、左様心得てもらいたいという言い渡しでありました。
 初めに処女の如き「皆様」の様づけも、多分その辺から出たのでしょう。
 道庵先生の説によると、医者としての自分の職掌上、病気や薬と同格に、すべての人を待遇しようという好意に出でたのにはちがいないが、これを実行に先立って発表してしまったのは、少々|逸《はや》まったようです。
 果して、さまざまの弥次や、質問や、難題が続出しましたけれど、先生は少しも撓《ひる》まず、最後までそれを説伏するの意気
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