の、坊主で医者を兼ねた奴が見ると、車から飛んで降りて、その乞食を介抱して、とうとう帝のお召しをわすれてしまったという奴がある……ところでまた、おれの先祖には、お百姓の病気を癒《なお》しても十八文、二代将軍の病気を癒しても十八文しきゃ薬礼を取らなかった奴がある」
といい出すと、気の早いデモ[#「デモ」に傍点]倉が、
「取れる奴からはウンと取って、ちっとはこっちへ廻してくれたらよかりそうなものだ、よけいな遠慮じゃねえか」
 この差出口には道庵先生がハタと怒って、
「馬鹿野郎」
と一喝《いっかつ》を食わしたが、急に我と我が唇のあたりをつねって、
「それがいけねえのだ、この口が……ところで、よく考えてごらん、病人と、医者と、薬はついて離れねえものだ、病人がなければ医者はいらねえ、病人があり、医者があっても、薬がなければ飲ませることもできねえ、つけてやることもできねえ」
「先生! 馬鹿につける薬はねえっていいますぜ」
「デモ[#「デモ」に傍点]倉様、お前、今日はまあ少し黙っていておくれよ、おれも今日はしらふ[#「しらふ」に傍点]で話してるんだからな」
 さすがの道庵も、デモ[#「デモ」に傍点]倉
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