[#「いましめ」に傍点]を忘れて、お万殿のお詣りの時間を犯し、その怒りに触れたために、この始末だろうという説が最も有力でありました。
死骸は一通り検視を受けた上に、ともかく、間近の孫次郎の宿の一室へ引取られて、そこへ静かに横にして置きますと、ちょうど来合わせた巫女《いちこ》があります。宿の女中たちは、巫女を呼んで、この女のために口よせ[#「よせ」に傍点]を頼み、その非業《ひごう》の魂をやわらげると共に、無告《むこく》の訴えを幽冥界から聞こうとしました。巫女は心得て、樒《しきみ》の葉に水を手向《たむ》けて、あずさ[#「あずさ」に傍点]の弓を鳴らし、
「そもそも、つつしみ、うやまって申したてまつるは、上《かみ》に梵天《ぼんてん》帝釈《たいしゃく》四天王《してんのう》、下界に至れば閻魔法王《えんまほうおう》……」
もっともらしく神おろしをはじめたが、時が時でしたから、笑う者がありませんでした。
この口よせ[#「よせ」に傍点]のいうことは、一向とりとまりはないが、その文句のうちに、「口惜《くや》しい悲しいで気がとりつめ」とか、「この魂が跡を追いかけて引き戻してくる」とか、「東は神宮寺、西
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