あれは眼のあいた奴にはできない芸当だ、あの引寄せる力がめあきにはない。おれも今までずいぶん、命知らずと戦った、また千葉の小天狗栄次郎殿や、練兵館の歓之助殿(斎藤弥九郎の次男歓之助、弱年にして鬼歓《おにかん》の名を得たり)は怖ろしい相手だと思うが、それは怖ろしくとも眼があいている」
「めあきは不自由なものだと、塙検校《はなわけんぎょう》が言った」
 丸山はカラカラと笑ったが、仏頂寺は浮かない。

 また一方、この日の朝まだき、下諏訪の秋宮《あきのみや》の社前は、まがい[#「まがい」に傍点]ものの鹿島の事触《ことぶれ》が、殊勝らしく、
「さて弘《ひろ》めまするところは神慮《しんりょ》神事《かみごと》なり、国は坂東《ばんどう》の総社|常陸《ひたち》の国、鹿島大神宮の事触れでござる。さて鹿島大神宮の一年の御神事《ごしんじ》は、七十二度の御神事、七度の御祭礼とござって、いきがい[#「いきがい」に傍点]、おきどり[#「おきどり」に傍点]、湯様《ゆためし》の御神事と申して、一天地のようだいを申してまかり通る。当年はすなわち天に陽明とござって、日照《ひでり》が六分……」
 七ツさがりに、その日の先触れ
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