、手には白刃を提《ひっさ》げて立っています。
 無事で帰ったというよりは、殺された魂魄《たましい》が煙の如く立ち迷うて、ここへ流れついたと見るのが至当かも知れない。

         十五

 一方いのじ[#「いのじ」に傍点]ヶ原を再び後へ戻ったところ、峠の上の立場《たてば》、五条源治の茶屋は、この時、上を下への大騒ぎであります。
 それはほかでもない、ここへ、さいぜん[#「さいぜん」に傍点]出立した四人が舞戻って来たからです。しかもそのうちの二人の者が、血に染みた二人の者をかつぎ込んで来たからであります。
 丸山勇仙は高部弥三次を肩にかけ、仏頂寺弥助は三谷一馬を引背負《ひきせお》って、この茶屋へかけ込みました。
 それによって見ると、負傷したのは二人で、負傷しないのが二人。負傷の程度はドノ位か知らないが、二人とも、身動きもできないのを、ともかく、応急の血どめをして、ここへ担ぎ込み、仏頂寺弥助は、はげしく店の者を追いまわして、蒲団《ふとん》の上にゴザを敷いて、ともかくも、その上へ二人の負傷者を横たえる。丸山勇仙は刀の提げ緒を取って襷《たすき》にかけ、
「亭主、大急ぎ、焼酎《しょうちゅ
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