す。
「テ、テ、テッ砲だぞ!」
と主《あるじ》が叫び出したが、自分で何をいい出したかわかってはいますまい。鉄砲の銃口《つつぐち》が無暗に上り下りして躍っています。
すると、外では、やや間《ま》を置いて、
「お雪ちゃんはいないか……ともかくもここをあけて下さい」
「ナニ!」
まだがんがん[#「がんがん」に傍点]として、何が何だかわからないで、居たり、立ったりしていると、程遠からぬ裏の物置にいたお雪と久助との地獄の耳にそれが届きました。
「おや?」
久助の胸に固くなっていたお雪が、まず聞き耳を立てると、久助も、
「あの声は?」
といいました。その時、表で第三度目の戸をたたく音――
「誰もいないか、久助どの、お雪ちゃん」
それでまさしく合点がゆくと共に、二人は重し[#「重し」に傍点]にかけられた千貫の石が、急にハネのけられた気持がしました。
「先生が戻って来ましたよ」
「たしかに、そうでしたよ」
二人が、はじめて立ち上ると、その時、またも表でホトホト叩き、
「ともかくも、ここをあけて下さい」
久助とお雪とは表口へ走り出しました。島原遠征の鉄砲が、漸く手の上に納まったのもこの時であ
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