て徐々《そろそろ》と前へ歩んで行くから、高部もいささか張合いが抜けて業《ごう》が煮え、
「生国《しょうごく》と姓名を名乗らっしゃい」
 高部はまたも竜之助の肩をこづ[#「こづ」に傍点]き立てましたから、竜之助が、
「生国は下総国、猿島郡《さしまごおり》」
と何のつもりか出鱈目《でたらめ》のところを述べると、この時まで、後見役気取りで、あとについて来た三人のうちの仏頂寺が、急に二人の横を摺《す》り抜けて前へ出てしまいましたから、高部はちょっ[#「ちょっ」に傍点]とその挙動を怪しみました。しかし、もともと仲間のことですから、怪しんだのみで危《あや》ぶんだわけではありません。
 そうすると、徐《おもむ》ろに歩んでいた竜之助が、ふいに足をとどめたものですから、押並んで歩んでいた高部も足をとどめないわけにはゆきません。その間《かん》の空気が、なんだかちょっ[#「ちょっ」に傍点]と変でしたから、後ろにいた三谷と丸山も妙な面《かお》をして立ち止まりました。
 この時、高部は前よりグッと手荒く、竜之助の肩をつかみ、極めて意地悪く小突き廻すと、その時、竜之助の癇《かん》がピリリと響き、
「ちぇィッ」
 
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