そう》な」
老巧の久助も面《かお》の色を変えました。この人は事をわけて相手をなだめるために下り立ったのではない、まさしく怒気をふくんで待ち受けているのです。病人であり、盲者《めくら》であるこの人が……。油を以て火を迎えるようなもの。
物騒な相手よりも、相手を知らぬものが怖い。久助は何かいおうとして、慄《ふる》え上ってしまいました。
しかし、心得たのは、お雪を乗せた駕籠屋で、客の安全よりは自分たちの安全を頭に置いて、竜之助にいわれた通り、お雪を乗せたままの駕籠を中に、程遠からぬいのじ[#「いのじ」に傍点]ヶ原の一軒家めがけて飛ばせてしまいました。馬も、馬方もそれについで――
久助は、無謀千万な同行者の態度に、いうべき言葉を失って慄え上っている間に、
「お呼び留め申して失礼」
おだやかならぬ四人のものは、早くもそこへ追いついたから、久助は、本能的にお雪の駕籠を追いかけて走りました。
あとにひとり残った竜之助は、うしろを顧みずしてあるきながら、
「おのおの方は、さいぜんからわれわれをお呼び留めなさるようだが、何の御用でござる」
「ちと、承りたい筋があって」
竜之助と押並ぶように
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