ょうしん》の大天狗が天降《あまくだ》ったものとでも思っているのか知らん。そのもてなし方は有難いのが半分、面白がりが半分で、やたらに崇《あが》め奉って、これから到るところ、そのお立寄りを願うことになりそうです。お立寄りを請《こ》われるたびに踊り子の連中には、相当の振舞があるにはあるが、いよいよ大迷惑なのは米友です。
両側の家から、紙に捻《ひね》ったお賽銭を投げるのが、誰を目的《めあて》であろうはずはない、みんな米友の身体をめがけて投げられるのだから、
「痛エやい」
米友はムキになって痛がっているところへ、馬の側に立った二人の童子は、ヒューヒューヒャラヒャラと節面白く横笛を吹きはじめました。その笛の調べが実にうまい。踊りの連中は、その笛の音でまたいい心持に踊り出しました。
その時、一方、吉原の廓内では、思いもかけぬ天上から、ひらひらと落花の舞うが如く、幾多の紙片が落ちて来るから、或る者は欄干《てすり》から手を伸ばし、或る者は屋根へ上り、或る者はまた物干へ駆け上って、その紙片を手に取って見ると、それはいずれも、あらたかな神仏のお札であります。にわかにおしいただいて神棚へ上げるやら、お神
前へ
次へ
全187ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング