ないものでございます」
「そうだ、流行りものとなると、人気がまるっきり別になってしまうんだ。今時《いまどき》の攘夷《じょうい》というやつもそれと同じで、そのことができようとできまいと、それを言わなければ人間でないように心得ている。流行りものというやつは全く厄介物だな」
「上方ばかりじゃございません、先生のお国の常陸《ひたち》の筑波山あたりでも、昔はずいぶんああいったものが流行ったということでございますね」
「古いことを担ぎ出したものだな、あれは歌垣《うたがき》といって、やっぱり男女入り乱れて踊るんだ、ずいぶんいかがわしい[#「いかがわしい」に傍点]話もあるが、今の流行《はや》りものよりは幾分か風流だろう」
「伊勢の国には、またつと[#「つと」に傍点]入りというのがありましてね、大勢して踊り歩いて、日頃、大事なものを隠して置く家の前へ来ると、つつと入りこんで、その大事なものを取り出して見るのですが、大事にしている娘や、お妾さんを見られて弱る者があるそうです」
「武州の府中の六所明神の提灯祭りは、一定の時になると、町という町の燈火《あかり》を残らず消して、集まったものが入り乱れて踊るのだそ
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