あんまりキツいと、きっと咎《とが》があります、許して上げれば、その徳が、いつかはこっちへ向ってかえりますけれども、あんまりキツいことをなさると、恨みがみんなこちらへかかるものでございます。何か大変が出来ましたようですね、何でございます、エ、本当の御亭主さんが気狂いになりましたんですって? そうでございましょう、そういうことにならなければよいにと思いました。敵も味方も見さかいなく斬りつけておいでなさるんですって? それそれ、そういうことになってしまうのでございます、悲しいことですね、なんでも最初に許しておしまいになれば、そんなことにはならないのでございましたのに、許して上げないから、こんな悲しいことが出来ました」
 弁信は逃げ惑う人に押し返されながら提灯を振り立てて、こんなことを言いましたけれども、誰とて耳に入れるものはありません。またなるほどと感心して、それを聞いているような場合でもありません。
 兇刃を振りかざした気狂いは、もうその背後まで迫って怒号しています。
「おれの女房は美《い》い女だ、美い女だから、おれも好きで女房に貰ったんだ、おれが好きで貰った女房を誰がなんと言うんだ、おれ
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