も御多分に洩れず、冷やかに突き放しました。
「お前のお父さんを連れて来て助けてもらえ」
 女の子は頭を振りました。
「お父さんは駄目です、お父さんは助けてくれません、お父さんが助けてくれないだけならいいけれど、そのお父さんが先に立って、ああして母ちゃんを苛《いじ》めているのですもの」
「エエ、お前のお父さんが先に立って?」
「ええ、お父さんだって、そんなに母ちゃんが憎いのじゃないでしょうけれど、ああして、先に立って、母ちゃんのお仕置《しおき》をしなけりゃならないんですって。だから誰だって、母ちゃんを助けてくれる人はありません。小父さん、どうぞ、頼みます、もう母ちゃんに悪いことをさせませんから、今日は、これで許して上げてくださいまし、どうぞ、頼みます、小父さん」
 こう言って女の子が、杖とも柱とも竜之助一人に縋《すが》りつく時に、一方盲法師の弁信は、いよいよ群集の中へ深入りしてしまいました。
「皆さん、人の罪を責めるのは結構なことでございますけれども、それよりも結構なのは、人の罪をゆるして上げることでございます、責められて恨む者はございましても、ゆるされて有難いと思わぬものはございませぬ
前へ 次へ
全221ページ中191ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
中里 介山 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング