して秋の夜の月のように冴え渡って行く。
 余音嫋々《よいんじょうじょう》としてその一曲が吹き終った時に、ようやく人の足音と話の声が聞え出しました。
「下総の、小金ケ原の、一月寺というのへ行ってごらんになると、今でもあの門前に石碑《いしぶみ》が立ってございます、わたくしには読めませんが、読んだ人の話によりますと『骨肉同胞たりと雖《いえど》も、案内人無くして入ることを許さず』と刻んであるそうでございます。一旦、あの寺へ入りました以上は、父母兄弟でも、案内人に許されなければ、面会ができないものとなっているのでございますが、それが昔は『骨肉同胞たりと雖も、山門に入るを許さず』とあったのだそうでございます。つまり、昔のは、父母兄弟でありましょうとも、案内人が有りましょうとも無かりましょうとも、いったん寺へ入ったものには面会を許さないという、宗門《しゅうもん》の掟《おきて》なのでございましたそうです。それを近頃になって白河楽翁《しらかわらくおう》さんというお大名が、それではあんまり酷《ひど》い、というので、案内人無くして入ることを許さず、と改めさせたのだそうでございます。これはどちらがよろしいでし
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