だと思っているのか」
「わたしは何だかわからない、善い人だか、悪い人だかわからないけれど、わたしは離れられない」
「あいつは、悪人だぜ」
米友は抱えていた頭を擡《もた》げて、こう言いましたけれども、女はさのみ驚きません。
「どうして、あの人が悪いの」
「ありゃ、女が好きだよ」
「エ?」
「そうして、腕が利《き》いてるよ」
「それは知っていますよ」
「女が好きで、好きな女をみんな殺しちまうんだ――腕が利いてるから堪《たま》らねえ」
「米友さん、お前はそのことを本気で言っているの、それを知って、そうだといっているの、エ、それを、わたしが知らないと思ってるの」
「うむ――」
米友は何か知らず、力を入れて唸《うな》りました。女は、米友の近くへ摺寄《すりよ》って、
「さあ、言って下さい、わたしは少しも驚きません、あの人が、女を殺したということを、お前が知っているなら言って下さい、わたしも知っていることを言ってみせます」
「うーむ」
米友が再び唸って、額に皺《しわ》を寄せて、深い沈黙に落ちようとする時に、女は躍起《やっき》となって、真向《まとも》に燈火《あかり》へ面《おもて》を向けて、さも心
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