終わり]
と吹いて行くと、
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それとても苦しうござらぬ、若いが二たびあるにこそ、えい、そりゃ、枯木で花が咲くにこそ……
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どうしてこんなに面白いのだかわからない。自分で吹いて、自分の音色に聞き惚れていると、金の鈴を振るような制多伽童子の音声が、常住不断に耳もとで鳴りひびいています。心なき駕籠屋も、心して駕籠を揺れないように舁《かつ》いで行くものらしい。
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鎌倉の御所のお庭で、十七小女郎がしゃくを取る、えい、そりゃ、十七小女郎がしゃくをとる……
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しゃくをとるはいいけれど、いったい、この駕籠はどこまでやるつもりだ。
十一
お角があの晩、おそく両国の小屋へ帰って来た時分に、まだ茂太郎が帰っていませんでしたから嚇《かっ》としました。
小屋の者どもを叱りつけて、迎えにやったけれども、そのお客はとうに帰ってしまったとのことです。お角が、むしゃくしゃに腹を立てたのは無理がありません。こうなっては、たしかにかどわか[#「かどわか」に傍点]されたと見るよりほかはない。大切《だいじ》
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