するの、気味が悪いじゃないか、気味が悪いじゃないか、およしよ、およしよ」
「三つ捉まえて懐ろに入れてるんだよ、食いつきゃしないさ、慣れてるから食いつくものか、あたいの懐ろの中で、いい心持に眠っていらあ」
「ああいやだ、聞いてもぞっとする」
盲法師《めくらほうし》は木の上を見上げながら、ぞっとして立ち竦《すく》みました。
「だっていいだろう、なにも、あたいは蛇を苛《いじ》めたり殺したりするために、蛇を捉まえるんじゃないからね」
木の上では申しわけのような返事です。
「それにしたってお前、蛇なんぞ……早く下りておいで」
「もう二つばかり捉まえてから下りるから、弁信さん、お前、あたいにかまわずに燈籠を点《つ》けに行っておいで」
木の上の悪太郎は下りようともしないから、盲法師は呆《あき》れた面《かお》で金剛杖をつき直しました。
二
浪切不動の丘の上に立つ高燈籠の下まで来た盲法師は、金剛杖を高燈籠の腰板へ立てかけて、左の手首にかけた合鍵を深ると、潜《くぐ》り戸《ど》がガラガラとあきました。杖は外に置いて、釣燈籠だけは大事そうに抱えて中へ入った盲法師、光明真言《こうみ
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