めて、手頃の小石を拾い取るや、右の手をブン廻すと、小石は風を切って庭の中に飛んで行きました。
「誰だ、いたずらをするのは」
「おいらだ、おいらだ」
 米友は百日紅《さるすべり》の枝を伝って、塀を乗り越してやって来ました。米友の投げた小石をそらした竜之助は、刀を抱えて、障子をあけて、家の中へ入ってしまいました。
「ムク」
 そのあとで、徒《いたず》らに眼をパチパチさせた米友は、持っていた杖の先でムクの首のあたりを突いて、
「お前は家へ帰れ」
 そう言ってから、いま竜之助があけて入った障子を細目にあけて、
「おい先生、どうしてるんだ、寝てしまったのかい」
 それでも返事がないからズカズカと上って行きました。それで枕屏風の上から中を覗き込んで、
「おい先生、お前、昨夜《ゆうべ》はどこへ行った」
 その言葉は、米友としても突慳貪《つっけんどん》であります。
「どこへも行かない」
「冗談いっちゃいけない、今度という今度こそは、すっかり手証《てしょう》を見たんだ。お前は、昨夜辻斬をしたな」
「そんなことがあるものか」
「ねえとは言わせねえ。驚いちゃったよ、その身体でお前が毎晩、辻斬に出るというんだ
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