のり」に傍点]でも落しているのか、そこは井戸側の蔭になって、よく見ることができませんけれども、やがて、すっくと立ち上って、両刀を小腋《こわき》にして、憂鬱極まる面《おもて》をうなだれて、悄々《しおしお》と縁側の方に歩んで行く姿を見ると、押せば倒れそうで、いかにも病み上りのような痛々しさで、さすがの米友が見てさえ、哀れを催すような姿なのであります。
「あいつは幽霊じゃねえのか知ら、どうもわからねえ」
そんな、やつやつしい姿で縁側のところまで辿りついた竜之助は、そこへ両刀をそっとさしおいて、日当りのよいところの縁側へ腰をかけました。だから、ちょうど、米友の覗いている節穴からは正面にその姿を見ることができます。その蒼白《あおじろ》い面《かお》を、うつむきかげんに、見えない目で大地のどこやらを注視しながら、ホッと吐息をついている。その呼吸までが見るに堪えないほどの哀れさであるけれども、日の光は、うららかといっていいくらいのかがやいた色で、この人のすべてを照らしておりました。
「おや?」
この時に、また米友を驚かせたものがあります。それは、今まで自分の身の辺《まわり》にいたムク犬が、いつのま
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