を飛び出した時の要領は、依然としてその要領を得ないで帰っては、空《むな》しく百日紅《さるすべり》の枝に向って、その余憤を漏らすというようなわけでありました。
その時に、板塀の中で釣瓶《つるべ》の音がします。誰か水を汲んでいるに違いない。そこで米友は、板塀の節穴から中を覗《のぞ》きます。
長屋の裏庭の井戸ばたで、水を汲んで面《かお》を洗っているのは、机竜之助でありました。
「ふーん」
それを節穴から覗いた米友は、やっぱり呆《あき》れ返った面をして、嘲笑をさえ浮べました。
手拭で面を拭いてしまった竜之助は、その手拭を腰にはさんで、盥《たらい》の水を流しへザブリとこぼし、それからまた手探りで釣瓶を探って、重そうに水を釣り上げると、それを盥にあけておいて、縁側の方へ歩いて行く。
「ふーン、ばかにしてやがる」
米友がその後ろ姿に冷笑を浴びせている間に、竜之助は縁側まで行くと、そこへ絡《から》げて置いた両刀を携えて、井戸端へ帰って来るのであります。そうして、刀の柄《つか》だけをザブリと盥の中へ入れて、それをしきりに洗っているもののようです。柄だけを洗っているのか、或いは中身の血のり[#「
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