す時の米友の面《かお》は、
「ちぇッ、また出し抜かれたな」
という表情で、或る時は町家の軒下をくぐり、或る時は屋根の上を躍り越えたりして、深夜の市中を走ります。たしかに、何者かを追蒐《おっか》けて出たのだが、その帰り来った時には、いつも呆然自失《ぼうぜんじしつ》です。何物をも認めることなくして出かけ、何物をも得るところなくして帰るのです。帰り来ると、がっかりして、囲炉裏《いろり》の傍に座を構えながら、枕屏風《まくらびょうぶ》を横目に睨んで、
「ちぇッ」
舌を鳴らして額の皺《しわ》を深くしながら、火を焚きつけることが例になっているのであります。
昨夜――むしろ今暁のことは例外でありました。今まで、そうして深夜に物を追蒐けて出ても、その当の目的とするものを何もつかまえては帰らなかったように、自分も、夜番にも、辻番にも、尻尾《しっぽ》を押えられるようなことはなしにここまで来たが、昨夜はついに、辻番と検視の役人の前に立たねばならなくなりました。
しかし、それは、鐘撞堂新道の相模屋の雇人であるということで、お蝶の巧妙な証明も役に立って無事に釈放されて、今になって帰っては来たものの、昨夜、家
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