ものだ」
「どうしたらいいでしょう、わたしは怖くって……」
 お蝶は慄えながら、それでも再び屍骸の傍へ寄って来て、
「京お召でございます、藍《あい》に茶の大名《だいみょう》の袷《あわせ》、更紗染《さらさぞめ》に縮緬《ちりめん》の下着と二枚重ね……」
 お蝶はようやく着物の縞目だけを見て、こう言いました。
「なるほど」
 辻番の一人は、矢立と紙を出して、お蝶の口書《くちがき》を取ろうとするものらしい。
「帯は茶の献上博多《けんじょうはかた》でございましょうね」
「それから?」
「羽織は黒羽二重《くろはぶたえ》の加賀絞り……」
「なるほど、そうして髪は島田、鼈甲《べっこう》の中差《なかざし》、まあ詳しいことは御検視が来てからのことだ。ところでお前方」
 二人の辻番は、改めて米友、弁信、お蝶三人の者を篤《とく》と見廻し、
「三人のなかで、誰がいちばん先にこの死骸を見つけなすった。いやまあ、後先《あとさき》はドチラでもよいが、拘《かかわ》り合《あ》いだから三人とも、御検視の来るまで控えていてもらいたい、御迷惑だろうがどうも已《や》むを得ん」
 そこへ、また一人の辻番が、菰《こも》をかかえてやっ
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