、お蝶さん、お前さんにはあの声が聞えませんでしたね」
「わたしにゃ、なんにも聞えやしませんよ」
「なぜ、私はあの時に、大きな声をして呼んで上げなかったんだろう、あの人が、あんなに虐《さいな》まれて殺されている間、それをここにじっと立って、だまって聞いていた私の心持が、自分でわかりません」
「ほんとに何を言ってるんでしょうね、弁信さん、お前さんの言うことが、まだわたしにはサッパリわからない」
「私も私で、いよいよ自分の心持がわからなくなってしまいました、ただ、ああして虐まれて若い女の人がなぶり殺しに遭っているのを、遠くに離れて聞きながら、私はそれを助けて上げようとしないで、何かの力ですく[#「すく」に傍点]められて、その音を聞いている間、私もかえっていい心持のようになって、しまいまでだまってそれを聞いていた自分の心持が、自分でわかりません」
「なんだか、私はぞくぞくと凄くなってきましたよ、弁信さん、お前さんのその面《かお》が凄くなってきました、どうしたらいいでしょうね」
「ああ、わたしもどうしていいか、わからない、今までわたしは、こんな心持になったことはありませんから」
「早く帰りましょ
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