けていました。ある種類の婦人客のうちには、何かの好奇《ものずき》から、茂太郎を競争する者さえ現われようという有様です。お角も、その人気を得意には思いながら、また心配にもなってきました。
 両国附近のある酒問屋の後家さんが、ことに茂太郎を執心《しゅうしん》で、お角もそれがためには思案に乱れているとのことでしたが、本人の茂太郎は、いっこう平気で、自分の周囲に群がる肉の香の高い女たちには眼もくれず、清澄の山奥から連れて来たという、唯一の友達と仲睦《なかむつ》まじく遊んでいました。
 茂太郎が唯一の友というのは、長さ一丈五尺ばかりある一頭の蛇です。
 順番になると茂太郎は、この蛇を連れて舞台へ現われて、芳浜の小島の美竹《めだけ》で作ったという笛を吹いて蛇を踊らせます。舞台から帰ると自分の楽屋に蛇を連れ込んで、食物を与えたり、芸を仕込んだりしています。夜になると枕許の箱へ入れて、藁《わら》をかぶせてやり、
「お休みなさい」
 蛇の持ち上げた鎌首を撫でると、蛇は咽喉《のど》を鳴らして眠りに就くという有様であります。
 茂太郎はありきたりの蛇使いではありません。この子は、子供の時分から蛇に好かれる子
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