兵馬に他の目的があればこそ、我から進んでこんな無礼な振舞をしてみようとはするものの、これらの仕打ちは一種の不良少年か、追剥《おいはぎ》類似の、ずいぶんたち[#「たち」に傍点]のよくない挙動と見られても仕方がないのであります。先方が、いよいよ恭謙であり、礼儀正しくあることによって、兵馬は自分で浅ましいと思いながらも、ここまで来ては退引《のっぴき》のならぬことですから、
「お見忘れでござるか、先刻、大門にて御意《ぎょい》得申した、あの御挨拶が承りたいために、おあとを慕うてこれまで参りました。あれはいったい、拙者に恨みあってなされたか、ただしは、お人違いでもござったか、武士の一分そのままにはなり難き故、ぜひ御返答が承りたい」
兵馬は心苦しくも、こうして性質《たち》の悪い強面《こわもて》を試みると、件《くだん》の覆面はいよいよ神妙に、
「あれは人違いでござりまする、平《ひら》に御容捨を願いまする」
こう言われて、兵馬はまたも取りつく島がありません。こっちから無礼を加えた上に、ここまでついて来て、なお執念深く喧嘩を売りかけようというのだから、もう堪忍袋《かんにんぶくろ》が切れてよかりそうなも
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