いで絵の本を伏せて、梯子段の降り口にかかりました。
 離れにいるお絹は、このごろでは、ずっと以前のように切髪に被布の姿で、行い澄ましておりました。母屋《おもや》の方へは滅多に出入りしないけれども、どうしたものか、お角が来た時だけは、お絹の神経が過敏になります。今日もお角が訪ねて来たことを知って、
「また、あの女が来たようだから、お前、御苦労だが様子を見て来ておくれ」
と召使の女中に言いつけて出してやりました。そのあとへ、
「御新造《ごしんぞ》、おいでか」
 庭先から入り込んで来たのは、前に福兄と言った大奴《おおやっこ》であります。いつのまにか着物を着替えて若党の姿になり、脇差を差して刀を提げ、心安立てに縁から上って来ました。
「おや、福村さん」
と言って、お絹は愛想よく迎えました。お角に言わせればこの人は福兄で、ここへ来ては福村さんになる。前の時は奴風で、ここではもう若党に早変りしているのが、化物屋敷の化物屋敷たる所以《ゆえん》でありましょう。
 若党の福村は座敷へ入って、しきりにお絹と話をしていたが、暫くして、
「これから大将のお伴《とも》と化けて、番町まで出向かにゃならん、今日はこ
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