れで失礼」
と言って、慌《あわただ》しく辞して行きました。
お絹は、それを見送っていましたが、やがてハタと障子を締めきって、
「面白くもない」
つんと机に向き直って頬杖をつき、すこぶる不機嫌の体《てい》であります。それは実際、お絹にとっては面白くないことでしょう。今の福村の話というのは要するに、お角を賞《ほ》めに来たようなものなのです。お角が房州まで出かけて行って、あやうく命拾いをして帰った上に、掘出し物を買い込んで来るし、それに大名だか旗本だか知らないが、ともかくも身分あるらしい立派な金主をつかまえて、近日花々しく両国橋で、二度の旗揚げをしようという運びになっていることを福村が、お絹の前で話して、相変らずあの女の腕の凄いことを吹聴《ふいちょう》して行きました。
お絹の前で、お角の腕の凄いことを吹聴するのは、つまりお絹の腕のないことをあてこすり[#「あてこすり」に傍点]に来たとひが[#「ひが」に傍点]まれても仕方がない。イキとハリとになっているのを、福兄が知らないはずはなかろうと思われます。女軽業にしろ、見世物にしろ、女の腕一つで、一旗揚げようというのはともかくエライことでないこ
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